何かと話題になる事も多いNHK受信料とその契約についてですが、まず結論から言えばテレビアンテナの設置だけで契約・支払いが義務となるわけではありません。
NHK受信料の契約・支払い義務は地デジの受信環境が整っている場合です。以下に詳しく見ていきます。
放送法64条とテレビアンテナの役割を確認しよう
(受信契約及び受信料)第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2 協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。
(国際放送の実施の要請等)
引用:e-Gov法令検索
64条の冒頭に、『受信設備を設置した者は』とある通り、あくまでもテレビアンテナでは無く地デジ放送の受信設備です。
受信設備とは、テレビアンテナだけでなく、テレビ本体やワンセグチューナー付きのモバイル端末やパソコン(+モニター)が該当しますので、テレビが視聴できる状態でなければNHK受信料の契約義務も支払い義務もありません。では、もう少し細かく見ていきましょう。
すでにNHKと契約中の場合
- テレビアンテナを撤去……契約解除の申し込み手続きが終了するまでは支払い義務アリ
- テレビアンテナは設置されているがTV本体は無い……契約解除の申し込み手続きが終了するまでは支払い義務アリ
- TVが見られる状態だがNHKは見ていない……支払い義務アリ。裁判の敗訴例もあり
- テレビアンテナもTV本体もあるが接続されておらず視聴できない……契約解除の申し込み手続きが終了するまでは支払い義務アリ
すでにNHKと契約をしている場合は、どのような状況であっても契約解除の手続きを行わない限り支払い義務は発生します。よくある『他局は見ているがNHKは見ていない』『NHKの不祥事がけしからん』などといった論法は一切通用しません。そんなことでワガママを言っても是々非々で結局は支払うハメになるだけですのでご注意下さい。
NHKと受信契約をしていない場合
※CATV・光TV未契約・地デジユーナー付き端末不保持である場合
- テレビアンテナ未設置……契約義務はありません。
- テレビアンテナは立てているがTV本体は無い……契約義務はありません。
- TVが視聴できる状態だがNHKは見ていない……契約義務アリ。早々に契約し、受信料を支払いましょう。
- テレビアンテナもTV本体もあるが接続されておらずテレビが映らない……契約義務は無い可能性が高いが判例はありません。
- 賃貸アパートで大家が勝手にTVの受信環境を整えている……借主が契約する義務アリとの判例が出ています
まず気を付けなければならないのは、ケーブルテレビや光TVなどテレビアンテナを立てるのとは別の手段でTVを見ていた場合でも『受信設備が整っている』と当然判断されますので、その場合は契約義務・支払い義務ともに発生します。
ワンセグ機能付きの携帯やタブレット、チューナー付きパソコン、自動車用の車載アンテナなども同様です。
難しいのは、TV本体もテレビアンテナもあるが、単純に端子を接続するケーブルが無いのでTVが見られない、といった場合です。本当にTVを見ないのであれば、NHKの委託訪問員が来た際に、実際にテレビが繋がっていないことを確認・証明してもらう事で、契約しない形を取れるかと思いますが、こういった判例は無いのでグレーゾーンと言えるかもしれません。(※勿論、本当は見ているのにケーブルだけを隠すことを推奨することはありません)
NHKの受信料契約はあくまでもテレビアンテナの有無では無く地デジ放送の受信設備が整っているかいないかが判断基準で、それはスマホやタブレットも含む全端末が対象という事です。
設置するとNHKと契約する必要がある設備とない設備
NHKの受信料を支払う義務があるか?ないか?の判断は、NHKが受信できる設備を設置しているかしていないかで決まります。
次では、どんな設備があると支払い義務が発生するかを解説しています。一見同じに見えてもワンセグの機能が付いていることで支払わなければいけない可能性もあるため、よろしければ参考にしてください。
設置するとNHKと契約する必要がある設備
NHKとの契約を結んでいなくても、放送法で「NHK放送を受信できる設備を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならい」と定められているため、以下の設備を所持または設置している場合はNHKと契約する必要があります。
- スマートフォン
- 携帯電話
- パソコン
- カーナビ
- ワンセグ
などNHKの受信が可能な機器・設備であれば、NHKを視聴できる環境が整っているため、法律上は受信料を支払う義務が発生します。
逆にここをクリアしておかないと近年では、NHK側の主張が通る可能性が高く、訴訟になると敗訴するケースが多くなってきています。
設置してもNHKと契約する必要がない設備
一方でNHKの受信が不可能な下記のような設備であれば、契約や支払いの義務が生じることがありません。
- スマートフォン
- モニター
- パソコン
であれば、正当な理由で契約や支払いを断ることができるため、受信料を払いたくない方や、テレビを見ない方は、NHKの受信機能がない機器に買い換えるのも
近年ではNetflixやYouTubeなどの映像コンテンツがインターネットで視聴可能となってきたことから、テレビの視聴する必要がないとうい方が増えてきています。
NHKの受信料契約は拒否できる?
第5条 放送受信契約者は、受信機の設置の月から第9条第2項の規定により解約となった月の前月(受信機を設置した月に解約となった放送受信契約者については、当該月とする。)まで、1の放送受信契約につき、その種別および支払区分に従い、次の表に掲げる額の放送受信料(消費税および地方消費税を含む。)を支払わなければならない。引用:日本放送協会放送受信規約
放送法64条の規定にもある通り、地デジ放送の受信設備が整っている限りは契約義務もそれに伴う支払義務も発生しますので、地デジが見られる状況にある以上、契約拒否は違法行為です。
契約は双方の合意の下に成り立つもので、憲法にある財産権などを根拠い『経済的自由』がある以上、契約締結は個人の自由だ、とい主張もありましたが、2017年12月6日の最高裁の判決で、その主張は退けられました。あくまでも放送法に従って契約の義務がある、という判断です。
それでも契約したくない場合
原則としては、『テレビを見られない状態にする』だけの事です。地デジ・BS放送のどちらも全く視聴できないのであれば、契約する必要はありませんし、NHKの受託業者が訪問してきても、堂々と自宅内を見せれば良いだけです。
では、本当は見られるけど契約したくないという場合はどうすれば良いのでしょうか。
居留守やウソはリスクあり
ほぼ確実な方法は居留守を使って一切訪問員とのやり取りをしないか、TVが無いとウソをつき、かつ自宅の中は見せないというやり方です。ネット上ではこのように書かれている事も少なくありません。
ただしこのやり方の場合、仮に外部のテレビアンテナや自宅内にテレビが設置してあることを外部から見られ受信設備が整っている証拠として撮影された場合、訴えられれば敗訴する可能性が極めて高いです。と言うのも、このような形でNHKに提訴されればこちら側は受信設備が整っていないことを反証しなければなりませんが、これは悪魔の証明でありまず不可能だからです。その場合は、証拠を押さえられた日まで遡って受信料の支払いが必要となりますので、ご注意下さい。
契約は拒否ではなく保留にする
ここからはあくまで管理人の私見であり、一切の責任は持てませんのでその事をご理解の上ご覧ください。
NHKとの受信料契約は、あくまでも“契約”である以上、双方の合意が必要ですから、法令上契約を拒否することは出来なくても保留にすることは可能です。いわゆる『契約はする。だが契約するのはNHKであってあなた(NHKの受託業者)とはお話しない』という手法です。
NHKの受信料契約は100%委託業者の営業マンであって、NHKの社員が来るわけではありません。ただし、契約先はNHKです。私たちは『NHKの代理業者が本当かどうか』など判断できませんので、その証明を彼らに求めます。勿論、委託証明書のような物を提示するでしょうが、それが本物であることも判断できません。ですから、NHKの正社員と証明できる人でなければ詐欺の疑いがあるので契約を保留する、という形です。実際にこの手法で契約を保留し続けている方もいるようです。
ただ……それはやはりフェアな方法ではありません。テレビアンテナを含む受信設備があるならば法令に則って契約すべきですし、契約をしたくないならばテレビを見ることが出来ない状態にすれば良いだけです。
NHKの受信料を滞納してしまったらどうなる?
- NHKから請求書が数か月間届く
- 延滞利息がかかってしまう
- 集金人が自宅へ訪問してくる
- 裁判所から支払督促が届く
- 財産の差し押さえが始まる
最初はNHKから請求書が届きますが未払いのまま数か月が経過すると、督促状が届きます。それでも支払いがない場合は裁判所から「支払督促」があり、2週間以内に異議申し立てがなければ「仮執行宣言(差し押さえ)」になるケースが多いです。
異議申し立てをすると裁判になるのですが、まずは当事者同士での話し合いの場が持たれるので、そこでお互いが合意すれば和解後に支払いとなりますが滞納金が多額の場合は分割に応じてくれることが多いです。
たとえ、裁判となったとしても多くのケースで勝ち目がないため、裁判前に和解となり債務整理を行うことがほとんどとなっています。
NHKの解約条件
NHKを受信できる設備を持っている場合には解約することができませんが、以下のように「世帯が一緒になる・世帯がなくなる」場合にのみ解約を行うことができます。
- 結婚や同棲などで2世帯が1世代になる
- 海外への転居
- 世帯主が亡くなる
というような、特別な場合にのみNHKを解約することが可能となっているので、以上のような条件以外にNHKを解約するには、「NHK受信可能な設備を全て売る・廃棄する」方法しかありません。
NHK解約までの流れ
- STEP1NHKふれあいセンターへと連絡する
- STEP2解約したい理由を詳しく伝える
- STEP3折り返しNHKから確認の電話がある
- STEP4NHKから解約届が送付される
- STEP5解約届の記入や廃棄証明のコピーを入れる
- STEP6NHKが解約を受理
- STEP7受信料が払い戻される
まずはNHKふれあいセンター(0120-151515)に連絡をする前に解約する正当な理由を準備しておきましょう。解約の意思を伝えるだけでなく「実家に帰る・結婚をする・会社の寮に入る」など支払いの義務がなくなることを伝えられるようにしておきましょう。
基本的その後すぐに解約届を送付してもらえますが、場合によっては再度連絡がある場合や訪問調査などを行う可能性があります。
解約書が届いたら書類の記入や、解約に必要な書類のコピー(廃棄書やリサイクル証明書など)を同封して返送してください。
書類がNHKに到着してから約1~2週間で払い戻しがされますので、それでNHKの解約手続きが完了となります。
アンテナ設置時のNHK受信料・契約のよくある質問
アンテナを設置した時に発生するNHKの受信料と契約のよくある疑問や悩みについて詳しく紹介していきます。
アンテナがあってもNHK受信料は発生しますか?
アンテナを設置したからと言ってNHKの受信料を必ず支払う必要はありません。支払わなくてよい条件としては
- NHKが映らないチューナレスのテレビを使用している
- モニターなどのテレビが映らない映像機器を使用している
- アンテナを設置してもテレビが映らない
などがあります。大手家電メーカーではありませんが、ドンキホーテで話題になった「NHKが映らないテレビ」などもあるので、支払いを避けたい場合にはお勧めです。
テレビにアンテナがなくても受信料は発生しますか?
NHKを受信できる条件ではないため、テレビアンテナを設置していない場合はNHKの受信料は発生しません。
また、アンテナを設置してもNHKを受信できる状態でなければ支払いの義務が発生することはありません。
テレビを見ていなくてもNHK受信料は払わないといけない?
テレビを見ていない状態でもアンテナを設置して、NHKが見れる状態であれば支払いの義務が発生します。
ワンセグなどを使用している場合でも、支払いの義務が発生するので注意しましょう。